1. 考察

今回の震災は被害の範囲の広さ、被災者の多さ、その上、福島原発爆発による放射性物質による汚染被害と多岐に亘っています。被災している場所も立地条件も違うので一律の対応ではどうにもなりません。それがやっとこの頃分かってもらえるようになったようです。

質問内容で、障がい者ならではの質問をすることができなかったことは悔やまれます。「補装具をはずして寝ることができるようになったのはいつ頃」等。ですが、自由記述に詳しく書いている人もあり、参考になりました。
「障がい者と言うより被援助者(重病人なども含む必要があるので、この用語を使います)はどうしても弱い立場に置かれる」このことが、はっきりした災害だと思います。ボランティアで20カ所以上の避難所を廻りましたが、車椅子の人を見かけたのは福島県“たいら体育館”と岩手県“リアスホール”だけでした。他にもいたかもしれませんが、非常に少ないことは確かです。ものを買うにしても健常者と同様に並んで買うことはできない人もいます。ディズニーランド方式など知恵を働かせることも必要でしょう。

避難所について

今回のアンケートで見る限り、何処の避難所も下肢障がい者にとって心地よいものではなかったようです。避難所そのものが体育館であること、車椅子用トイレが外にあること(履き物の着脱が不自由ですので雨の日などはますます大変です)足の踏み場のない平面を松葉杖や補装具を着けた足で歩くことの困難さは想像以上のものがあります。下肢障がい者であるが故に入口で寝起きせざるを得ず、ほとんど眠れずに精神的も追い詰められたという例もありました。車椅子ならなおさらです。

総ての指定避難所のユニバーサルデザイン化が急務であると考えます。

福祉避難所について

仙台ポリオの会の人たちは、研修会などを通して他の人たちよりは福祉に関する情報が多いと考えられます。でも、福祉避難所に関する情報は行き渡っていませんでした。自治体の職員にも情報が行き渡ってないことも分かりました。福祉避難所利用対象者に自立した肢体不自由の人は想定されていなかった、と言う話しも耳にします。非常事態の混乱の中で公的機関が災害弱者に誰がどう対応するのか、もう一度考え直す必要があります。緊急時要援護者名簿等の早急な整備と運用マニュアル、そして一番は関係者の意識改革が必要だと思います。

食料や水の問題について

非常用食料の備蓄は2〜3日では足りない、と言うことが分かりました。輸送手段が寸断されると正常に戻るまで1週間はかかるようです。日頃から震災に備え備蓄している人も備蓄が少なくて大変だったようです。避難所には行けない、でも食料は必要、そんな時対応してくれるNPOがあることは心強いものです。今回もNPOからの援助があり助かったという例がありました。大きなスーパー、コンビニは災害に弱いと言うことも分かりました。都市部では何時間も並んで食料を手に入れています。そんな中で個人商店のフットワークの軽さが目立ちました。独自のルートで商品を手に入れ販売しているところも多かったようです。東京では、どう言う訳かインスタント食品だけが売れ切れていました。お湯を沸かすなどの調理は乾麺でも米でも一緒なのに不思議なことです。後にも書きますが、このような行動様式がガソリンの不足を招いたと考えられます。

燃料の問題について

都市ガスは災害に対し脆弱です。30年ほど前の宮城県沖地震の時も都市ガスの復旧には多くの時間を要しました。今回は1ヶ月以上かかっています。石油ストーブや練炭コンロを持っている人は一通りの調理ができました。電気の復旧が早かったのでオール電化住宅の人は助かったようです。ですが、今後地域によっては電気の復旧が遅れることも考えられます。福島原発に事故により原子力発電が見直されれば、夜間電力を使うオール電化住宅がどうなるか分かりません。非常用熱源は必要でしょう。カセットコンロも良いですが、石油ストーブの方が汎用性はありそうです。ですが、余震が怖くて火を付けることができなかった人もいました。震災後でもなじみの燃料店から灯油を配達してもらえたという話しも聞きますので、日頃人的ネットワークを作ることが何より大切と思われます。LPガスは配管の安全さえ確かめることができれば自分で復旧できるので燃料代は高めですが、良い面もあります。

ガソリン調達の問題について

今回のアンケートで一番困ったこととして上がったのが「ガソリンの入手」です。福祉車両を移動手段にしている人にとってガソリンがないことは死活問題になります。透析患者の車両は緊急車両として給油を受けていたと言うことです。福祉車両には優先的に入れてもらえる制度なども検討の必要があると思います。もう一つは買いだめの問題です。仕事がある真っ昼間に何時間も並べる人はそういません。それでも相当な人数が並んで必死でガソリンを入れていました。娘のために退職した父親が並んだなどの話を聞きます。普段ガソリンを満タンにしない人、車を1週間に1回程度しか使わない人などが満タンにしたためにガソリン不足がおきたようです。災害時の人々の心が問題なのかもしれません。

通信手段について

固定電話、携帯電話とも震災直後は何とか通じましたが半日経つと通じなくなりました。長いと1週間以上通じない地域もありました。そのため会員の安否確認に手間取りました。今の電話は停電になると通じないので不便です。昔ながらの黒電話は震災後でも早く通じました。IP電話・光電話契約でなければ、昔の黒電話を非常用に持つという手もあります。また、PHS電話は結構通じたという話しがあります。携帯の電池がすぐ無くなってしまうという話も聞きました。自動車を持っている人はシガーライターからとれる携帯充電器が便利なようです。また、車載のDC-ACインバーターがあれば、パソコンなども使えます。また安否確認にはインターネットの安否確認サイトが役立ちました。便利な世の中になったものです。社会的弱者である障がい者だからこそ、情報を素早く手に入れる手段(日頃の近所付き合い・インターネット・携帯電話等)を持つことが必要でしょう。

一年後のアンケートから

昨年、震災一年後のアンケートを行いました。配布数53、回収数23で43%でした。前回に比べると相当低くなっています。前回アンケート結果に書いたように実際被災した人と、それほど被害を受けなかった人とでは、受け止め方が相当違っていました。

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