調査・記録事業「患者・家族のこえ事業Ⅱ」
「今、伝えたいこと」
大震災から2年、深まる心の傷と叫びが聞こえる
「私の人生なんだったのかわからなくなりました」「人々の心の中はどうだろうか。私はやはり何一つ整理がついていない」「祈ること以外に、自分にできることが見つかって、安堵した」「今、仮設の天井を一人見つめていると、胸が締め付けられる。どうして私は生きているんだろうと・・」
「こんな私か助けられて、生き残ってしまった。生かされた私は、今もまだ辛く、苦しい」
ここに寄せられた手記は、あの膨大な被災者の数からみると、ほんの一握りの声だろう。
しかし、その声の持つ切実さは、多くの被災された方々の中でも、さらに難病や重い障害を抱えている方たちに共通した思いではないだろうか。
あの大震災から2年、多くの方から「復興とはなんなのだ」「構造物の復興だけではなく、人の心の傷が癒えた時が本当の復興なのだ」という声が聞こえてくる。ここに寄せられた手記はそのことを物語っている。
「復興は進んでいない」という声々「あの震災を忘れかけている人もいる」「福島は忘れられていく」という声とともに「思い出したくない」という声も聞こえてくる。どちらも本当は同じなのだとも思う。
「病に甘えず、生きていきたい」「3月11日以前の二人に近づいてきている。その事が私には何よりも嬉しい」「あの日があってこそ。今があり、明日を求めている」と、少しずつ生きていくことへの希望もめばえている。
構造物から心のケアヘ、経済的な格差から生じる復興格差から、多くの社会的弱者(この言葉は嫌いだが)も共に生きていくことできる復興への道を見つけ出していきたいと、心から願わずにはいられない。
厚生労働省が「難病患者サポート事業」として、患者の手記・声を集めようとしたのも、その表れの一つだろう。
「難病」と言われる病気とともに人生を歩む人たちの記録は、きっと多くの人々にとっても何かの役に立つのではないかと考える。難病への理解と治療の役に立つ時代へと進化してゆく。今進められている「新たな難病対策」への改革に向けて、この冊子が読まれることを願う。
2013年3月11日
編集委員会を代表して
一般社団法人 日本難病・疾病団体協議会(JPA)
代表理事 伊藤たてお