患者家族による手記

病院にいる安心感 菊地龍生(患者保護者・釜石市)

※岩手県難病・疾病団体連絡協議会『TSK通巻753号』筋ジストロフィー協会会員寄稿p49〜50より転載

震災発生の当日は遅い昼食を終え、家族三人でテレビを見ていました。いつもと違う地震の揺れを感じ、私はベッドで寝ている息子のそばで、揺れが収まるのを待ちました。長い揺れと地鳴りの聞こえる中、頃合いをみて息子を背負い自家用車に避難し、人工呼吸器をセットしました。エンジンを掛けしばらく様子をみていましたが、余震が連続的にあり、停電もいつ復旧するかわからない状況なので、人工呼吸器の電源を確保するため、3月11日の午後6時半頃県立釜石病院に避難しました。病院は避難してきた患者さんが、通路や待合室にマットを敷き一杯だった。息子は検査室の診察用ベッドに移され、自家発電の電源を確保することができました。診察用ベッドは幅が狭く、体位交換が思うようにできないため本人は苦痛だったと思います。病院に避難してから、沿岸部は津波で何もなくなったと聞き、半信半疑でした。時間の経過と共に事の重大さを感じました。避難先の釜石病院も地震によりダメージを受けたと言うことで、3月14日にドクターヘリで内陸の県立江刺病院に転院しました。上空から沿岸を見ると、大槌・山田方面から狼煙のような煙が見えました。4月4日に自宅付近の電気やガスが仮復旧したとの連絡があり、転院先の県立江刺病院を退院しました。その週の4月7日に大きな余震により停電。再度県立釜石病院に避難し、2日後に自宅に戻りました。息子は肺炎にかかって以来、一気に体が弱くなり、嚥下障害もでてきた。以前から専門病院での療養を説得していたこともあり、今回のような災害緊急時のこともあり仙台の西多賀病院に行くことを本人も納得してくれました。在宅介護の難しさを肌で感じ、息子がいなくなった寂しさはあるものの、病院にいる安心感は大きいです。今回の震災で色んなことを体験し、考えさせられました。この場をおかりし、お世話になった方々に感謝を申し上げます。本当にありがとうございました。

2013年3月23日 南相馬市小高区。瓦礫に中に咲くたんぽぽ(「福島」を肌で感じるツアー)

東日本大震災とその後 嶋津めぐみ(人工呼吸器をつけた子の親の会 バクバクの会)

※NPO法人秋田県難病団体連絡協議会『TSK秋田なんれん』会報第48号 p4〜5より転載

みなさん、こんにちは。美郷町在住の嶋津です。2歳になる娘の「ゆめ」がバクバクっ子で、こちらの会にお世話になっています。

ゆめは、出生時に低酸素脳症となった為自力での呼吸が困難となり、生後すぐから人工呼吸器をパートナーに毎日を過しています。酸素も24時間流しており、また、視覚・聴覚の障害、四肢の麻痺もある為、痰の吸引・経管栄養・導尿などの医療的ケアも必要としています。

ゆめが在宅生活を始めて9ヶ月目に、東日本大震災が起こりました。その2ヶ月程前にバクバクの会から防災ハンドブックが届いていて、豪雪で積もった雪が消えたら自家発電機を買って準備しておかなければと話していたところでした。

幸い、我が家もゆめも直接的な被害はありませんでしたが、やはり1番困ったのは停電です。呼吸器とパルスオキシメーターにはそれぞれ6時間と8時間のバッテリー機能があり、酸素ボンベにも余裕があったので慌てず対処できました。しかし、雪の降る寒さの中、暖房の切れた部屋の中では徐々に体温が奪われ始め、カセットコンロで沸かしたお湯で加温加湿器の蒸留水を湯煎したり身体を温めるためカイロを使用したりと保温に努めました。

電話も不通になり病院との連絡がつかなかったのですが、丁度訪問看護を受ける時間帯でもあった為、病院に戻った際に入院希望の伝言をお願いし入院の準備にとりかかりました。そして1時間後、別の看護師の訪問があり「入院の受け入れOKです」と返事を頂きました。地震から4時間後病院に到着しましたが停電でエレベーターが使えず、6階の小児科病棟までは家族でチームワークを発揮しゆめを移送することとなりました。父親がゆめを抱っこし、お兄ちゃんは酸素ボンベを持ちお姉ちゃんがアンビューを押す係り。私は呼吸器一式を持ち階段を上ってゆきました。

その後、地震から3日目の夜にようやく電気が回復しましたが、余震も多く計画停電の話もあったため2週間病院にお世話になりました。

現在、外出の為と停電時の備えとして正弦波の自家発電機を1台、呼吸器の着脱式バッテリーを2本とバッテリーチャージャーを1台準備しました。そして、ゆめを階段で移送する際、重さの負担を軽減させるための移送担架を作成し、リュックには背負いながらすぐに使えるよう酸素ボンベと予備のアンビューバックを入れています。その他、医療的ケアに必要な物品や着替え等を旅行バックに詰め玄関の近くに用意しています。

地震のみならず、災害はいつ発生するか予測不能の場合があります。日頃から必要物品の準備と使用可能か点検を行い、また、避難経路の確認や避難時のイメージトレーニングで、いざという時の為に備えておきたいと思います。

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