「患者・家族のこえ事業Ⅰ」

3.11 あの日の「記憶」を伝えよう 刊行にあたって

編集委員会 伊藤たてお

難病対策の平成23年度(2011年度)からの新規事業として「患者サポート事業」が始まり、日本難病・疾病団体協議会(JPA 代表伊藤たてお)、全国難病センター研究会(会長糸山泰人)と株式会社北海道二十一世紀総合研究所の3者が「患者サポート事業受託コンソーシアム」を設立して当事業を受託しました。

この事業は患者(相談)支援事業、患者活動支援事業、調査・記録事業の3事業と企画・評価委員会で構成されています。私たちはこれらの事業を分かりやすく区別するために、それぞれ①相談支援ネットワーク事業 ②手をつなぐ支援事業 ③患者・家族のこえ事業 と名づけました。

おりしも3.11の東日本大震災と原発事故に遭遇し、事業の開始日程は大幅に遅れることとなりましたが、患者家族の手記を集めてテキスト化・データベース化するという「こえ事業」はその内容を急遽変更し、この未曾有の大震災に遭遇した患者・家族の体験と手記を収録することとしました。

この大震災に遭遇した患者・家族はどのように対処したのか、そのとき患者・家族はどのような状況におかれていたのか、何を感じ何に困っているのかを生の声として収録しておきたいと考えました。これはいつか何かの役に立つのではないか、ということではなく、とにかく被災した患者・家族の声を集めなければならないという思いだけであったといってもよいと思います。むしろとにかく何かをしなければいられない、というような気持ちであったといえるでしょう。

全国組織の患者団体と被災4県の県難病連、保健所、難病相談支援センターに募集の協力をお願いしました。被災地の各団体や機関は本当に大変な中をお願いすることになり大変申し訳ない思いでした。

応募いただいたもののほかに「難病のこども支援全国ネットワーク」の小林信秋専務理事が携帯メールでまさにそのときの患者や関係者の安否確認をした記録も収録させていただき、4月から5月にかけてJPAが北海道難病連と難病支援ネット北海道の協力で、被災4県の難病連と相談支援センターの訪問を行った記録のダイジェストも収録することとしました。

各患者団体の機関紙・誌にはいち早く生の患者・家族の記録が掲載されています。2年目もできるだけその記録の採録をしたいと思います。そしてこの作業はこの先もずっと続けなければならないと感じています。

多くの被災者の皆様のご冥福と被災地の一日も早い復興を心からお祈り申し上げます。

この作業をしている最中に、3月11日を迎え、各地で慰霊祭が催されました。日本難病・疾病団体協議会にも国立劇場で開かれた国の慰霊祭の招待状が届き、全国の患者団体の代表として参列させていただきました。

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